2005年11月10日

特定財源問題

目次

  1. 特定財源とは
  2. 道路特定財源の問題
  3. 一般財源化の問題

1.特定財源とは

特定財源とは、国及び地方の数ある間接税のなかで、その税収の全額または一部を特定の公的サービスのみに使途を限定して課された税源によるものである。国税では揮発油税(ガソリン税)、地方道路税、石油ガス税、自動車重量税、航空機燃料税、石油石炭税、電源開発促進税が、地方税としては自動車取得税、軽油引取税、入猟税、水利地益税があり、全体で約7兆円の財源規模となっている。
ちなみに、特定財源という言葉が財務省の正式文書の中で使わることはない。あくまで「特定財源等」として参考にされる程度の扱いでしかない。

財務省 「特定財源等」のページへ
(上記リンクは税制調査会 平成17年7月14日の答申内のページ)

2.道路特定財源の問題

こうした特定財源のうち、近年特に問題視されているのが道路整備を目的とした税源である「道路特定財源」である。この道路特定財源は特定財源全体の約85%を占め、平成16年度税収で約6兆円にも達する。

最初、1954年に始まった第一次道路整備5か年計画で揮発油税を国の道路整備に充当することが決定されて1956年に軽油引取税が創設されて以来、次々と道路特定財源は増やされ、さらに道路整備計画の拡大とともに本則の1.7倍から2.5倍もの暫定税率が適用され、そのほとんどが今に至るまで恒常的に続けられている。
道路整備が一定水準に達した現在、その費用(予算)はむしろ徐々に減少していってよいはずであるが、敢えて言うと”過剰”な収入(税収)の財源規模が先に決まっているわけであるから、これほど美味しい財源消化が期待できる予算は他にない。そしてそこには、道路族議員や道路公団、建設会社といった既得権益者が甘い蜜を手放すまいと雲集している。

道路特定財源の概要
税目課税対象税率税収の使途16年度税収
国税 揮発油税揮発油1キロリットルにつき48,600円道路整備緊急措置法に基づき10年度から5年間は全額国の道路特定財源とされている。また、同法等に基づき同期間中、1/4は地方への交付金の財源に充てるため直接道路整備特別会計に組み入れることとされている。27,714億円
地方道路税揮発油1キロリットルにつき5,200円都道府県及び市町村の道路特定財源として全額譲与されている。 2,965億円
石油ガス税自動車用石油ガス1キロリットルにつき17円50銭1/2は道路整備緊急措置法に基づき10年度から5年間国の道路特定財源とされ、1/2は都道府県及び指定市の道路特定財源として譲与されている。300億円
自動車重量税車検を受ける自動車等例)自家用乗用車:自重0.5トンごとに6,300円/年3/4は国の一般財源であるが、1/4 は市町村の道路特定財源として譲与されている。(国分のうち8割相当額は道路整備に充てることとされている。)11,093億円
地方税 自動車取得税自動車の取得例)自家用の自動車で軽自動車以外のもの5%道路財源4,556億円
軽油引取税軽油の引取り1キロリットルにつき32,100円道路財源12,989億円

なお、自動車に関連する税金としては上記以外に自動車税と軽自動車税があるが、自動車税は都道府県の、軽自動車税は市町村のそれぞれ一般財源である。

3.一般財源化の問題

こうした問題提起を受けて小泉政権は、確かに道路整備の必要性は薄れているが逆に環境問題などへの対応が必要として、道路整備だけでなく環境対策など他の財源として活用できるよう「一般財源化」するような動きをみせている。

ちょっと聞くと理にかなった話のようにも聞こえるが、自動車を保有している者の立場からよくよく考えてみると、お得意の話のすり替えでしかない。浮いた財源があるから他に回そうでは筋が通らない。それも、環境だけでなく、福祉や教育にも使えるようにしようとまで言い出しているのである。
必要性が薄れた特定財源は廃止(少なくとも暫定税率の割増分は廃止)し、国民の負担の軽減をまず図るべきである。その上で環境対策に予算が必要であれば、そのための財源確保を改めて検討すべきである。その時点で自動車所有者に対して環境税の新たな負担をお願いしますというなら考えてもいいが、福祉や教育に必要な税負担を自動車所有者さんお願いしますならお断りである。