(改正)ウェブコンテンツJIS
ウェブコンテンツJISとは
2004年6月20日、最初のJIS X 8341-3:2004「高齢者・障害者等配慮設計指針 − 情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス − 第3部:ウェブコンテンツ」(ウェブコンテンツJIS)が制定されました。
ウェブコンテンツJISは、Web関連技術の進歩への対応や世界的標準への準拠を目的として5年毎に見直すことが定められており、2004年の制定後も日本規格協会「情報アクセシビリティの標準化に関する調査研究委員会」(委員長 山田肇 東洋大学経済学部教授)において、その見直しの検討が行われてきました。
そして2010年8月20日、W3C(World Wide Web Consortium)の勧告(2008年12月11日公開)であるWCAG 2.0(Web Content Accessibility Guidelines 2.0)に準拠した、新たなJIS X 8341-3:2010(改正ウェブコンテンツJIS)が公示されました。
JIS(日本工業規格)は、我が国の工業標準化の促進を目的とする工業標準化法に基づいて制定される国家規格で、鉱工業製品に対しての形状や品質、性能、生産方法、試験方法などについての標準を定めているものです。
Webコンテンツもこの対象として、高齢社会における望ましい標準化のあり方として「規格作成における高齢者・障害者のニーズへの配慮」の必要性を訴え制定された「ISO/IEC ガイド71」(2001年11月、2003年6月20日にJIS Z 8071:2003として制定)を踏まえて規格化されました。
JISに法的な責任は求められていませんが、「工業標準化法」第67条(日本工業規格の尊重)において、「国及び地方公共団体は、買入れる鉱工業製品に関する仕様を定めるとき日本工業規格を尊重しなければならない」とされています。つまり実質的に、国(政府:中央省庁)や地方公共団体(県や市町村)では、ホームページについてアクセシビリティを確保することが必須とされたわけです。
日本工業標準調査会のホームページへ(JISが閲覧が出来ます)
日本規格協会「JSA Web Store」へ(JISの検索・購入が出来ます)
改正ウェブコンテンツJISの内容
JIS X 8341-3:2010(改正ウェブコンテンツJIS)は、 序文、本文の第1章〜第8章、そして付属書のA〜Dで構成されています。
前半では、ウェブコンテンツJISの位置づけや用語の定義、企画から設計・開発そして運用に至るまでの要件などが述べられています。そして第7章「ウェブコンテンツに関する要件」(JIS X 8341-3:2004での第5章「開発及び制作に関する個別要件」に該当)において、具体的に何をすべきかといった個別のガイドラインが示されています。
ウェブアクセシビリティ基盤委員会のJIS X 8341-3:2010関連文書のページへ
JIS X 8341-3:2010(改正ウェブコンテンツJIS)の構成
- 序文
- 1 適用範囲
- 2 引用規格
- 3 用語及び定義
- 4 ウェブコンテンツのアクセシビリティ達成等級
- 5 一般的原則
- 6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件
- 6.1 企画
- 6.2 設計
- 6.3 制作・開発
- 6.4 検証
- 6.5 保守・運用
- 6.5.1 アクセシビリティの品質確保
- 6.5.2 フィードバックによる意見の収集
- 6.5.3 アクセシブルな問合せ手段の提供
- 7 ウェブコンテンツに関する要件
- 7.1 知覚可能に関する原則
- 7.1.1 代替テキストに関するガイドライン
- 7.1.2 時間の経過に伴って変化するメディアに関するガイドライン
- 7.1.3 適応可能に関するガイドライン
- 7.1.4 識別可能に関するガイドライン
- 7.2 操作可能に関する原則
- 7.2.1 キーボード操作可能に関するガイドライン
- 7.2.2 十分な時間に関するガイドライン
- 7.2.3 発作の防止に関するガイドライン
- 7.2.4 ナビゲーション可能に関するガイドライン
- 7.3 理解可能に関する原則
- 7.3.1 読みやすさに関するガイドライン
- 7.3.2 予測可能に関するガイドライン
- 7.3.3 入力支援に関するガイドライン
- 7.4 頑健性に関する原則
- 7.4.1 互換性に関するガイドライン
- 8 試験方法
- 8.1 適合試験の要件
- 8.1.1 ウェブページ単位
- 8.1.2 ウェブページ一式単位
- 8.1.3 第三者によるコンテンツにおける例外
- 8.1.4 達成基準を満たすことができないウェブページの試験に関する例外
- 8.1.5 依存していないウェブコンテンツ技術を使用したウェブページの試験に関する追加事項
- 8.2 試験の手順
- 8.3 試験結果の表示
- 8.3.1 ウェブページ単位の場合
- 8.3.2 ウェブページ一式の場合
- 8.3.3 追加の表示事項
- 附属書A (参考)この規格を満たすウェブコンテンツ技術及びその実装方法の選び方
- 附属書B (参考)WCAG 2.0との整合性
- 附属書C (参考)JIS X 8341-3:2004とJIS X 8341-3:2010との比較
- 附属書D (参考)参考文献
旧JIS X8341-3:2004の第5章「開発及び制作に関する個別要件」
JIS X 8341-3:2010(改正ウェブコンテンツJIS)の主たるガイドラインと位置づけられる第7章「ウェブコンテンツに関する要件」は、W3CのWCAG 2.0に準拠するよう英文を翻訳してまとめられたため、残念ながら大変分かり難い内容となっています。
しかし、その主たる内容は、旧JIS X8341-3:2004の第5章「開発及び制作に関する個別要件」(39項目)を踏まえたものです。以下にその39項目の概略を掲載しますので、参考にしてください。
- 5.1 規格及び仕様
- a) 関連する規格及び仕様,文法に従って作成しなければならない。
- b) アクセス可能なオブジェクトなどの技術を使うことが望ましい。
- 5.2 構造及び表示スタイル
- a) 見出し,段落,リストなど文書の構造を規定しなければならない。
- b) 表示スタイルは,文書の構造と分離してスタイルシートを用いて記述することが望ましい。
- c) 表は,表題を明示し,できる限り単純な構造にして,その構造を適切にマーク付けしなければならない。
- d) 表組みの要素をレイアウトのために使わないことが望ましい。
- e) 利用者がページの内容を識別できるページタイトルを付けなければならない。
- f) フレームは,必要以上に用いないことが望ましい。使用するときは,適切に配慮しなければならない。
- g) 閲覧中のページがどこに位置しているか,現在位置の情報を提供することが望ましい。
- 5.3 操作及び入力
- a) 少なくとキーボードによってすべての操作が可能でなければならない。
- b) 入力欄では,入力例を分かりやすく示し,操作しやすく配慮しなければならない。
- c) 入力に時間制限を設けないことが望ましい。設ける場合は事前に知らせなければならない。
- d) 制限時間があるときは,利用者が時間を延長又は解除できることが望ましい。
- e) 利用者が予期できない状態でページを自動的に更新したり,別のページに移動したり,又は新しいページを開いたりしてはならない。
- f) サイト内で一貫性のある基本操作部分を提供することが望ましい。
- g) リンク及びボタンは,識別しやすく操作しやすくすることが望ましい
- h) サイト内での共通リンクメニューは,読み飛ばせるようにすることが望ましい。
- i) 利用者が誤操作したときでも,元の状態に戻せる手段を提供しなければならない。
- 5.4 非テキスト情報
- a) 画像には,代替情報を提供しなければならない。
- b) リンク画像には,リンク先が予測できる代替情報を提供しなければならない。
- c) 音声情報には,聴覚を用いなくても理解できる代替情報を提供しなければならない。
- d) 動画などには,字幕又は状況説明などの手段によって,同期した代替情報を提供することが望ましい。
- e) アクセス可能ではないオブジェクト,プログラムなどには,テキストなどの代替情報を提供しなければならない。
- 5.5 色及び形
- a) 情報を,色だけに依存して提供してはならない。
- b) 情報を,形又は位置だけに依存して提供してはならない。
- c) 画像などの背景色と前景色とには,十分なコントラストを取った配色にすることが望ましい。
- 5.6 文字
- a) 文字のサイズ及びフォントは,利用者が変更できるようにしなくてはならない。
- b) フォントを指定するときは,読みやすいフォントを指定することが望ましい。
- c) フォントの色には,見やすい色を指定することが望ましい。
- 5.7 音
- a) 自動的に音を再生しないことが望ましい。
- b) 音は,利用者が音量や再生・停止などを制御できることが望ましい。
- 5.8 速度
- a) 変化又は移動する画像又はテキストは,その速度,色彩,輝度の変化に注意することが望ましい。
- b) 早い周期での画面の点滅を避けなければならない。
- 5.9 言語
- a) 言語コードを指定しなければならない。
- b) 利用者が理解しづらい外国語は多用しないことが望ましい。
- c) 利用者が理解しづらい省略語,専門用語,流行語,俗語は多用しないことが望ましい。
- d) 利用者が読みづらい言葉(固有名詞)は多用しないことが望ましい。
- e) 単語の途中にスペース又は改行を入れてはならない。
- f) 文章だけでなく,分かりやすい図やイラスト,音声などを合わせて用いることが望ましい。