「ハッピーマンデー」を振り返る

2010年8月30日

目次

  1. ハッピーマンデーの制定までの経緯
  2. ハッピーマンデー効果の検証
  3. 休暇分散化への動き

1.ハッピーマンデーの制定までの経緯

 (1) ハッピーマンデー構想とは

平成に入って土日の週休二日制が定着しつつあった頃から(図1参照)、さらに祝日の一部を月曜日に固定させることで三連休を増やし、余暇時間の増大と旅行観光産業をはじめとする経済の活性化に繋げようとする考えが広がりはじめた。これが「ハッピーマンデー構想」である。

図1 何らかの週休2日制及び完全週休2日制の普及状況

週休2日制普及率のグラフ

(資料)旧労働省「平成11年賃金労働時間制度等総合調査結果速報」より

当時の財団法人余暇開発センター[1]では、1994年(平成6年)にハッピーマンデーによる経済効果が、成人の日(当時1月15日)で2,660億円、体育の日(当時10月10日)では5,494億円に上るとの試算を発表した。

1996年(平成8年)には、余暇開発センターや日本労働組合総連合会(連合)などが中心となって民間主導による「祝日三連休化推進会議」(会長:木村尚三郎東大名誉教授)が発足し、政治的な働きかけも盛んに行われるようになった。

こうした動きを受けて1997年(平成9年)11月、自民党の第二次橋本政権下においては、経済対策の目玉の一つとしてハッピーマンデーの創設が政府の経済対策に盛り込まれることとなった。なお、連合を支持母体とする野党民主党は、政府自民党よりハッピーマンデーの創設に一層前向きな姿勢をみせていた。

表1 「祝日三連休化」(ハッピーマンデー)の4つの効果

○ゆとりある生活スタイルの実現
余暇活動の機会が増えるとともに、新しい生活スタイルの実現がより容易となり、心身のリフレッシュ、自己実現、生活の楽しさ、豊かさを増すことにつながります。
○休暇の分散による混雑・渋滞の緩和
年末、年始、ゴールデンウィーク及びお盆の時期に集中する旅行や帰省、さまざまな活動が他の時期に分散し、行楽地や交通機関の極端な混雑や道路渋滞の緩和が期待されます。
○地域の活性化及び経済波及効果
旅行などさまざまな活動が活発となり、地域の活性化に貢献します。また、関連する多くの産業への経済波及効果も期待できます。
○祝日本来の意義の浸透
祝日の趣旨を反映した行事や活動を三連休時に行うことが可能となり、祝日の意義がより国民に浸透します。

(出典)祝日三連休化推進会議作成資料より

[1]財団法人余暇開発センター: 通産省主導の下、競輪の補助金で1972年4月に設立、2000年には「財団法人自由時間デザイン協会」と改組。自由時間デザイン協会は2003年3月31日に解散し、翌日2003年4月1日 に「財団法人社会経済生産性本部国際部」内に「余暇創研」が設立されている。

 (2) 平成12年より「成人の日」と「体育の日」の2祝日がハッピーマンデーに

1998年(平成10年)1月から始まった第142回通常国会において、民主党及び平和・改革など野党4会派から合同で、成人の日・体育の日・海の日・敬老の日の4祝日をハッピーマンデーとする「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案」が提出された。これに対し与党自民党からは、休日を取りにくい中小企業労働者らに配慮し成人の日だけを対象とする同名の法案が議員立法として提出された。

同法案は継続審議となったが、7月の参院選で自民党が大敗したのを受けて同年秋に召集された第143回臨時国会において与野党間で妥協案が模索され、成人の日と体育の日の2祝日を各月の第二月曜日に移し土曜日を含めて三連休にするための「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律」(平成10年10月21日法律第141号)が成立、2000年(平成12年)1月1日より施行されることとなった。

折しも、同国会は「金融国会」と称されたとおり、バブル崩壊後の橋本内閣による緊縮財政路線が景気悪化と失業率の増加を招き、7月の参院選自民惨敗を受けて橋本首相の退陣に代わって小渕内閣が発足、金融早期健全化法と金融再生法が審議採決された国会であった。

<参考>国民の祝日に関する法律(e-Govサイト)

 (3) 平成15年より「海の日」と「敬老の日」の2祝日がハッピーマンデーに追加

2000年(平成12年)1月1日から成人の日と体育の日の2祝日を月曜日指定化する国民の祝日改正法が施行された。

平成12年度版の「運輸白書」によると、この法律により最初のハッピーマンデーとなった成人の日(1月10日、月曜日)を含む1月8日から10日までの三連休の間に出発した旅行者数は、大手旅行会社を対象に調査を行ったところ、前年の同時期に比べて海外旅行では約2割、国内旅行では約5割の増加となり、祝日の月曜日指定化による旅行観光産業への経済効果がみられたと記されている(図2参照)

図2 平成12年1月8日から10日までに出発した旅行者数の対前年比較

旅行者数のグラフ

[注1] 海外旅行、国内旅行とも速報値であり、旅行業者ブランド商品による。
[注2] 海外旅行については、大手旅行業者4社の出発旅行客数。国内旅行については、大手旅行業者2社の出発旅行客数。
[注3] 平成11年1月8日〜10日は金・土・日曜日、平成12年1月8日〜10日は土・日・祝日の三連休。

(資料)旧運輸省「平成12年度 運輸白書」より

こうした声を受けて、2001年(平成13年)1月から始まった第151回通常国会には、与党からは公明党が主張し経済波及効果が認められるとして自民党も了承し自公保連立政権合意に盛り込まれた海の日と敬老の日の2祝日についても月曜日指定とする「国民の祝日に関する法律の一部改正案」が、野党民主党からもほぼ同様の内容の法案が提出された(与党案は平成14年1月1日から、民主党案はカレンダー業界などに配慮して平成15年1月1日からの施行とされた)。

しかし、9月15日の敬老の日を9月の第三月曜日とすることについては、祝日の意義が損なわれるとして全国老人クラブ連合会をはじめとする高齢者団体から反発や異議が相次いだ。そこで自民党は連合会側と協議し、祝日法改正に加えて老人福祉法も改正して2002年(平成14年)より9月15日を「老人の日」とし(ただし祝日とはしない)、15日から21日までの一週間を「老人週間」と定める妥協案がまとめられた。

これを受けて先に提出された2法案は撤回され、海の日と敬老の日の2祝日について月曜日指定とするほか老人の日及び老人週間を法定する規定を加えた「国民の祝日に関する法律及び老人福祉法の一部を改正する法律案」が与野党合意の下に内閣委員長名で提出され、同国会期中に全会一致で「国民の祝日に関する法律及び老人福祉法の一部を改正する法律」(平成13年6月22日法律第59号)が成立 、平成15年1月1日から施行(ただし第二条の老人の日及び老人週間の規定は平成14年1月1日から施行)されることとなった。

表2 ハッピーマンデーにより月曜日に移動した国民の祝日の一覧
祝日名日にち由来など
成人の日当初は1月15日
2000年(平成12年)より1月の第二月曜日
元服の儀が小正月である1月15日に行われていたことに由来し、1948年(昭和23年)公布・施行の祝日法によって制定された。
体育の日当初は10月10日
2000年(平成12年)より10月の第二月曜日
1964年東京オリンピックの開会式が行われた日であり、1966年(昭和41年)から国民の祝日なった。
海の日当初は7月20日
2003年(平成15年)より7月の第三月曜日[2]
明治天皇がはじめて軍艦ではない巡視船「明治丸」で東北地方巡航に出かけ横浜港に帰着した日であり、1941年(昭和16年)に逓信大臣の提唱により海の記念日として制定され、1996年(平成8年)に国民の祝日として制定された。
敬老の日当初は9月15日
2003年(平成15年)より9月の第三月曜日[2]
9月15日となった理由は諸説あるが、1950年代には全国で「としよりの日」として各種行事が行われるようになり、1964年(昭和39年)に「老人の日」と改称され、1966年(昭和41年)に国民の祝日「敬老の日」となった。

[2] 2003年(平成15年)7月20日は日曜日であり、従来通りの月日指定でも翌21日の月曜日が振替休日となったため海の日が実質ハッピーマンデー化されたのは2004年(平成16年)からになる。また、2003年(平成15年)9月15日は第三月曜日だったため、敬老の日についても実質のハッピーマンデー化は2004年(平成16年)からになる。

2.ハッピーマンデー効果の検証

次に、ハッピーマンデー導入の効果として期待された、「ゆとりある生活スタイルの実現」や「休暇の分散による混雑・渋滞の緩和」、「地域の活性化及び経済波及効果」、「祝日本来の意義の浸透」といった目的が、果たしてどれ程達せられたのかを探ってみよう。

 (1) ハッピーマンデーに対する世論

a. 調査事例その1

2007年(平成19年)に社団法人中央調査社が行った「祝日に関する調査」 によると(図3参照)、三連休が増えたことについて「非常に好ましい」が16.0%、「やや好ましい」が32.8%、「あまり好ましくない」が33.7%、「まったく好ましくない」が9.0%となっており、約半数近くが「好ましい」(「非常に好ましい」と「やや好ましい」の合計)と回答している。

性別でみると、男性は5割以上が「好ましい」と回答しているのに対し、女性は4割半ばとなっている。女性には、休暇が増えることによる家事負担の増加や、出費の増大による家計への影響を心配する意見が多いようである。また年代別では、20歳代の7割が「好ましい」と回答しているのに対し、年代が上がるにつれてこの回答割合が減少し、60歳以上では4割弱に留まっている。若い人ほど三連休を好む傾向が伺える。

図3 三連休が増えたことについて好ましいか好ましくないか[3]の意見割合

アンケート調査結果1のグラフ

[3] 「好ましい」は、「好ましい」と「やや好ましい」の合計、「好ましくない」は「あまり好ましくない」と「まったく好ましくない」の合計。
[注] 調査は全国の20歳以上の男女4,000人に対し、2007年10月5日〜14日に調査員による個別面接聴取法で行われた。有効回収数は1,347人。

(資料)中央調査社『「祝日」に関する調査』より

b. 調査事例その2

2007年(平成19年)11月17日付けの朝日新聞によると、全国約4,400人のbe面の登録読者モニターに対して「ハッピーマンデーを楽しんでいますか?」との問いかけを行ったところ、2,523人の回答者の67%が「いいえ」と答えた。「はい」とした33%もその理由は、「体を休められる」「気分的にゆとりができた」などが中心で、「泊りがけで出かけられる」などと経済効果につながりそうな理由は少数にとどまっている。

図4 「ハッピーマンデーを楽しんでいますか?」の問いかけに対する回答割合

アンケート調査結果2のグラフ

(資料)朝日新聞(2007年11月17日朝刊)より

 (2) 家計消費における旅行関連支出の推移

総務省「家計調査」から、二人以上世帯における1世帯当たり1か月間の支出の推移(1993年=100とする、図5参照)をみてみると、2000年(平成12年)から2003年(平成15年)にかけて家計の消費支出額の減少幅以上に宿泊費及びパック旅行費の支出額の減少幅が大きく、その比率は1999年の2.4%をピークに2003年には1.9%まで減少している。2004年以降は多少の増減はあるものの、2%前後の横ばいで推移している。

1999年頃はITバブルで当時のニューリッチ層の消費が膨らんだ時期であり、2003年はSARSの影響で旅行市場が落ち込んだ時期である。日本交通公社によると、一般に旅行消費は景気動向と連動しており、家計消費支出が伸びる時期に宿泊旅行費のシェアは高まり、家計消費支出が下がる時期にそのシェアは低下する傾向にあるという。ITバブルが崩壊した2001年以降、日本経済の長引く不況下において旅行消費が抑えられている状況を考慮すると、ハッピーマンデーによる浮揚効果がどれ程あったかは定かでないが、旅行観光産業の活性化に寄与したとは、このデータを見る限り認め難い。

図5 一月あたり家計支出と(宿泊費+パック旅行費)消費額ならびにその比率の推移

家計調査結果のグラフ

[注] 二人以上世帯における1世帯当たり1か月間の支出より作成(2000年以前は農林漁家世帯を除く)。

(資料)総務省「家計調査年報」より

日本交通公社の旅行者動向より、2000年(平成12年)と2005年(平成17年)の宿泊旅行の頻度データを比較してみると(図6参照)、2000年における「年間の宿泊観光旅行が4回以上」の人の割合は全回答者の17%で、その人たちの延べ旅行回数に占める割合は全体の51%を占めている。それが2005年になると、「年間の宿泊観光旅行が4回以上」の人の割合は14%に低下しているものの、その人たちの延べ旅行回数に占める割合は全体の53%を占め、増大傾向にある。

この背景には、「旅行する人」と「しない人」の二極化が進んでいるように見受けられ(日本交通公社「旅行動向シンポジウム」より)、これもやはりハッピーマンデーが旅行観光産業の活性化に寄与しているとは認め難い動きの一つである。

図6 宿泊観光旅行の頻度

旅行者動向調査結果のグラフ

(資料)財団法人日本交通公社「旅行者動向」より

 (3) 観光旅行客の動向

では、実際に観光旅行客数の動向はどうなっているか、国内旅行における国民一人当たりの年間宿泊観光旅行回数及び宿泊数の推移(図7参照)を見てみよう。

このデータでもやはり、成人の日と体育の日の2祝日がハッピーマンデーになった2000年(平成12年)や、海の日と敬老の日の2祝日がハッピーマンデーに追加された2003年(平成15年)の前後において、観光旅行客数が増加に転じるている様子は窺えず、長引く景気低迷の影響を強く受けて観光旅行客数は減少の一途にあり、ハッピーマンデーが市場の浮揚効果をもたらしたとは認め難い。

図7 国民一人当たりの年間宿泊観光旅行回数及び宿泊数の推移(平均)

宿泊観光旅行調査結果のグラフ

(資料)国土交通省「観光白書」より

なお、円高や格安海外航空券の広がりなどを受けて国内旅行より海外旅行が増え、国内経済より海外経済に波及している可能性もあり得る。

そこで、日本人の出国者数の推移(図8参照)を見てみると、2003年はSARSの影響で海外旅行客は大きく落ち込んでいるが、国内旅行に比べると海外旅行の客数は比較的堅調に推移していることが窺える。しかし、国内旅行に比べると海外旅行の客数は圧倒的に少なく、海外旅行への流出による国内旅行観光産業への影響は軽微であると思われる。

図8 日本人出国者数の推移

日本人出国者の年次推移グラフ

(資料)法務省「出入国管理統計」より

 (4) 成人式の出席率の動向

地方では、就職や進学で地元を離れる人が多いため、旧成人の日(1月15日)の祝日に成人式を開催したのでは帰省できずに成人式に出席できない対象者も少なくないと、以前から正月やお盆の帰省シーズンに合わせて成人式を開催する市町村も多かった。

そうした中、2000年(平成12年)の改正祝日法の施行で、成人の日がハッピーマンデーとなり三連休の月曜日指定となったことで、成人式の出席率も大きく改善することが期待された。

そもそも、各市町村において成人式が2000年の前後で何時開催されていたかや、成人式の出席率のデータがなかなか入手できない中で、たまたまデータが得られた青森県と長野県須坂市のデータから、成人式がハッピーマンデー化された前後における成人式の出席率の動きを探ってみたい(図9参照)

図9 成人式の出席率の推移(青森県と須坂市)

成人式出席率の年次推移グラフ

(資料)青森県教育委員会「青森県教育データブック2008.11」、須坂市ホームページ情報より

青森県内の各市町村において、過去に成人式が何時開催されていたかは全く把握できていない。成人の日がハッピーマンデーされる以前は、正月やお盆の帰省シーズンに開催され、ハッピーマンデー化された2000年以降は成人の日に開催することになった市町村も多いと思われる。なお須坂市においては、2005年(平成17年)以前は毎年成人の日に開催されている。

このように詳細な背景は把握できていないが、成人の日がハッピーマンデー化された2000年前後の成人式における出席率の推移を概観すると、毎年該当者数は減少する中、2000年以降の出席率が青森県でも須坂市でも増加傾向にあると認められる。

なお、文部科学省「学校基本調査」によると、2003年(平成15年)時点における高校卒業者の県外大学への進学率は、『出身高校の所在地県別大学入学者数』を基に計算すると青森県で67.0%、長野県で85.4%となっている。また高等学校(全日制・定時制)卒業生の県外就職率は青森県で33.3%、長野県で9.7%となっており、成人式出席該当者のうち県外在住者の割合は青森県及び須坂市共に7〜8割以上になると推察される。

ちなみに、須坂市では2005年まで毎年成人の日に成人式を開催していたが、帰省の都合などで日曜日に開催して欲しいとの意見が多いことを受け、2006年より成人の日の前日(日曜日)に開催している。

3.休暇分散化への動き

以上、ハッピーマンデーの効果について、世論や旅行関連支出の動き、観光旅行客の動向、成人式の出席率の動向などから探ってみたが、成人式に帰省しやすくなった出席者のメリットは認められるものの、そのことを含めて旅行観光産業等へのハッピーマンデーによる経済的波及効果はあまり認められない結果しか得られなかった。

ハッピーマンデーの施行から約10年が経ち、祝日の月曜日指定も国民に違和感無く受け入れられるようになってきた感がある今日、国においてはハッピーマンデーの効果については検証されることなく新たな観光産業の振興策として、ハッピーマンデーの廃止を含めた「休暇分散化」構想の実現が唱えられている。

2009年(平成21年)12月、観光立国の実現に向けた推進体制の強化を図るため、国土交通大臣(観光立国担当大臣)を本部長とし全府省の副大臣等で構成する「観光立国推進本部」の第1回会合が観光庁で開催された。観光立国推進本部の下には3つのワーキングチームが設置され、その一つが「休暇分散化ワーキングチーム」である。

休暇分散化とは、旅行観光産業の売上が年間100日の休日に集中し、交通渋滞や需給調整の弊害をもたらしていることから、旅行のピーク需要を地域毎等で分散させることより、「(1)ピーク需要の平準化による旅行料金の低廉化」、「(2)交通渋滞や混雑の緩和による移動時間の短縮化」、「(3)環境負荷の軽減、混雑解消によるインフラ投資の効率化ムダな投資の回避」、「(4)観光地における雇用の安定化」、「(5)生産性の向上、サービス水準・ホスピタリティの向上」、などの効果が期待されている。

2010年(平成22年)3月に開催された第2回休暇分散化ワーキングチームにおいて、休暇分散化パターンの政府具体案(表3参照)が示された。その内容は以下のとおりである。

表3 休暇分散化パターンについて

《基本方針》
  • 休日となる「国民の祝日」の日数は増やさない。
  • ゴールデンウィーク及びハッピーマンデーにおける「国民の祝日」については、「記念日」としての意味と「休日」としての意味を分けて考える。
  • これらの「国民の祝日」は、記念日として従来の日に残しつつ、休日としては、5 月(ゴールデンウィーク)、10月(シルバーウィーク)に、地域ブロック別に分散して設定する。
A案: GWの地域別分散
A-1案 GW期間の休日の地域別分散【5週に分散させるパターン】
憲法記念日(5月3日)、みどりの日(5月4日)、こどもの日(5月5日)を一つのまとまりとして、地域ブロック別に各週の月曜日〜水曜日に分散する。
現行の祝日はそれぞれ記念日として残すが、休日とはせず、企業、学校、行政機関等の「休日」を地域ブロック別に分散して設定 ⇒ 祝日法の改正or新規立法(「休日法」(仮称))
A-2案 GW期間の休日の地域別分散【2.5週に分散させるパターン】
A-1案と同様の措置を講じつつ、地域ブロック別に各週の月曜日〜水曜日又は水曜日〜金曜日に分散することにより、全体では2.5週に分散させる。
B案: 秋の大型連休の創設(地域別に分散して設定)
B-1案 秋の大型連休の創設【5週に分散させるパターン】
ハッピーマンデーのうち、「海の日」、「敬老の日」、「体育の日」を従来の日に記念日として戻しつつ、休日については、観光、スポーツ、文化活動等に適した時期として、10月・11月の各週の月曜日〜水曜日に地域ブロック別に分散する。 ⇒ 祝日法の改正or新規立法
B-2案 秋の大型連休の創設【2.5週に分散させるパターン】
B-1案と同様の措置を講じつつ、各週の月曜日〜水曜日又は水曜日〜金曜日に地域ブロック別に分散することにより、全体では2.5週に分散させる。

(出典)休暇分散化ワーキングチーム第2回の資料2より

経済産業省は2010年8月、観光庁と連携して休暇取得の分割化に関する国民の意見募集を実施し、その結果を「アイディアボックス集計結果」として発表している。それによると、「春の連休の分散化、秋の連休の創設のいずれも効果がないと思う」が64%を占めた。また、連休分散化による「メリットは特にない」とする意見が68%に上り、「デメリットを感じない」はわずか9%でしかなかった。分散化のメリットとしては、「混雑緩和で旅行がしやすくなる」、「旅行費用が安くなる」などの意見が多かったが、全体としては少数派意見である。一方、分散化のデメリットとしては、「休日の異なる地域に住む家族らに会えなくなる」、「休日の違う取引先と連絡が難しくなり、企業の経済活動に支障が生じる」、「仕事が休めなくなる」などの意見が多く寄せられた。この結果について観光庁では、「厳しい意見が多かったと受け止めているが、早ければ2012年の導入を目指したい」と話している。

一国の制度を変えることは、なかなか容易ではない。また、アイデアや検討してみただけでは何も変わらないのも事実である。石橋を叩いて壊してしまうより、石橋を叩きながら、もし壊れた時には岸に戻れる手段を講じて渡ってみることも必要であろう。しかしその前に、ハッピーマンデー構想の期待とその効果の検証を十分踏まえて再検討する必要があると考える。